東京高等裁判所 昭和24年(行ナ)15号 判決
原告 鎌田常次郎
被告 特許庁長官
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は特許廳が同廳昭和二十三年商標登録願第七九二一号拒絶査定不服審判事件につき昭和二十四年五月二十四日なした抗告審判の請求は成り立たない旨の審決を取り消す、訴訟費用は被告の負担とする旨の判決を求めその請求原因として、原告は「醤油の母」の文字を普通に使用する書体で縱書して成り、第四十五類「カラメル」と「アミノ酸」を適宜に混合し、更にこれを冷却して、固形状となした調味料を指定商品として、昭和二十三年五月二十一日特許廳え商標登録の出願(昭和二十三年商標登録願第七九二一号)をしたところ同廳は同年十月三十日本件商標は登録第三五七九七八号(醤母)と観念において同一又は類似し、彼此紛らわしく、しかも同一又は類似の商品に使用するものであるから商標法第二條第一項第九号の規定によつて登録できないものであるとし、拒絶査定をした。しかし特許廳は既に本件におけると同様案件の商標出願につき類似でないと判断していることは甲第一号証の一、二同第二、三号証等によつても分ることであるから、原告は右査定に対し、同年十一月三十日同廳え抗告の請求をしたところ、同廳は拒絶査定におけると同一理由で昭和二十四年五月二十四日抗告審判の請求が成立たない旨の審判をしたので、これが取消を求めるため本訴に及んだ旨主張した。(立証省略)
被告指定代理人は、請求棄却の判決を求め、答弁として、本件商標と審決引用の登録第三五七九七八号商標とが類似商標でないという原告主張は爭う。右両商標は観念において類似しているものであるからたとえ、外観、称呼において類似していないとしても、類似商標といい得るのであるから、商標法第二條第一項第九号の規定上登録は許されない。その余の原告主張事実は認めると述べ、甲号各証の成立を認めた。
三、理 由
本件商標と原告主張の審決において引用している登録第三五七九七八号商標とは類似商標であるか、どうかの点を除き、その余の原告主張事実は当事者間に爭がない。
よつて、右両商標が類似商標であるかないかという本件の爭点について判断する。
本件商標は「醤油の母」の文字を普通に使用する書体で縱書して成るもので、第四十五類「カラメル」と「アミノ酸」を適宜に混合し、更にこれを冷却して固形状とした調味料をその指定商品として、昭和二十三年五月二十一日特許廳え登録出願に係るものであることは本件弁論の全趣旨によつて認められ、また右引用の登録第三五七九七八号商標は「醤母」の文字を普通に使用する書体で縱書して成るもので、第四十五類他類に属しない食料品及加味品をその指定商品として昭和十七年九月十六日登録出願、同十八年五月二十四日登録されたものであることは成立に爭のない甲第四、五号証によつて認められるから、本件商標からは「醤油の母」という称呼及び観念を生ずること疑なく、引用の登録第三五七九七八号商標からは「醤母」の称呼と共に「醤油の母」という観念を生ずるものといわなければならない。およそ、商標の同一又は類似は外観、称呼及び観念の三点から観察し、そのいずれかの点において同一又は類似であればこれを同一又は類似の商標であるということができるところであつて、本件においては、両商標は称呼及外観においては類似できないとしても、その観念から考えれば、類似商標であると断じなければならない。甲第一号証の一、二甲第二、三号証によつては右断定を左右し得ない。しかも、前記のようにその指定商品において、相牴触するものというべきであるから本件商標は商標法第二條第一項第九号の規定によつて登録を許さるべきでない。
しからば特許廳が右と同一理由で原告の主張を容れなかつたのは正当で本件審決を取消すべき理由がないから原告の本訴は理由がないものとして棄却すべきものである。
よつて民事訴訟法第八十九條を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 中島登喜治 小堀保 薄根正男)